まだ1話・2話・3話を読んでいない方は、先にそちらを読んでから本記事の4話を読んでいただけると、より楽しめるのでぜひ読んでみてください!
・日本の無名サッカー選手が【ヨーロッパ1部リーグと契約するまでのストーリー】1話
・日本の無名サッカー選手が【ヨーロッパ1部リーグと契約するまでのストーリー】2話
・日本の無名サッカー選手が【ヨーロッパ1部リーグと契約するまでのストーリー】3話
ここで一度、前回までのおさらいをしましょう。
モンテネグロ1部リーグのチームと契約できたたものの、契約してから言葉の壁が立ちはだかり挫折。
必死に語学勉強や食事改革・肉体改造をしてなんとかプロデビューを果たしたのが、前回までの話になります。

継続して試合に出場できるように
公式戦デビューを果たしてから、継続的に試合出場時間が増えました。
この時の自分を振り返ってみると、試合に出場はできたものの全く安心していなかったのを覚えています。
というのも、僕がこのチームと契約を交わした際に契約書に書かれていた内容が、「1年契約」という条件でした。
つまり、僕には時間がないのです。
ただ試合に出ているだけだと、契約期間が終了すると満了になるか、移籍先を探さなければいけません。
なので、とにかく試合に出て点を取るなど、監督や上層部の人たちへアピールしなくてはいけませんでした。
試合に出られていた状況下でも練習から全力で取り組みアピールしました。
自分の努力が実ったのかはわかりませんが、デビュー戦から4試合目の時でした。
この日もスターティングメンバーで試合に出場。
前半終了間際、相手をドリブルで交わし放ったシュートがゴールに突き刺さったのです。
喜びが爆発して、ベンチのチームメイトのところまで走り歓喜したことを昨日のことのように覚えています。
そして、次の試合も得点はできなかったものの、アシストという形で数字を残すことができました。
ようやく、結果がついてきて波の乗ってきたと思った矢先のことでした。
世界中で、あのウィルスが大流行したのは。。。

コロナ禍に突入
2020年2月頃にあるニュースが自分の耳に入りました。
「新型コロナウィルスの流行」です。
このニュースを初めて見た時は、中国やアジアを中心に流行していて、まさかヨーロッパまで来ることは無いだろうと軽い考えをしていました。
しかし、そのニュースから約2週間後に近隣国のイタリアで発症者がでたニュースが流れたのです。
その瞬間、モンテネグロも近いうち必ず流行してしまうと直感しました。
自分の嫌な予感は的中し、すぐにモンテネグロでも発症者が出てしまい、世界中を巻き込むコロナ禍に突入したのです。
日本では、国がどのような制限をかけたかはわかりませんが、モンテネグロは外出禁止時間というもの発令しました。
夜中の20:00〜7:00の間は家から出てはいけないという国のルールが設けられたのです。
こんなことは、生まれて初めてだったので不安な気持ちとやるせなさでいっぱいでした。

リーグ戦中断
練習時間の短縮や人数を少数に分けて練習するなど、チームでもさまざまな対策がとられました。
来週には試合があるので、できる範囲で全力で取り組むしか無いと思い練習していました。
しかし、そんな中モンテネグロサッカー協会から「リーグ戦一時中断」という発令が出たのです。
モンテネグロだけでなく、近隣国のサッカーリーグも次々にリーグの中断というニュースが。。。
自分はサッカーをやりに日本から飛んで来たのに、そのサッカーができない状況に陥ってしまいました。
自宅待機中に、日本にいる家族とも連絡を取り合い近況報告をしながら、ただただリーグ戦再開がくるのを待っていました。
チームメイトやスタッフが発症者してしまったりと、練習すらままならない状況になってしまい、ただ自宅や人通りのない山道を走ったりして体力が落ちないようにしていました。
しかし、リーグ戦中断から3週間経っても再開の目処が立ちません。
人種差別の被害にあう
リーグ戦が中断されてから1ヶ月が経過。
街中を出歩く際マスクは必須で、スーパーやレストランなどの入店人数にも制限がかけられるなどあらゆるコロナ対策が取られました。
そんな中、食材を買い足しにスーパーへ行ったときのこと。
モンテネグロのスーパーでは、お肉を買う際は必要なグラム数を店員に伝えてその場で袋詰めしてくれる仕組みなんですが、僕がいつも通りグラム数を言おうとした時。。。
「近寄るなアジア人!」
と店員に怒鳴られたのです。
語学勉強をしていたため、暴言の内容もわかってしまい初めて人種差別を経験しました。。。
スーパー以外でも、レストランに行って席に座ると、隣に座っていたお客さんがこちらを睨み嫌な顔をして席を外し出ていくなど、いじめのような対応をされるようになったのです。
おそらく、コロナウィルスの発症元がアジアだという認識をこの国の人たちはしているため、日本人である自分に対して嫌悪感を抱いているのだと感じました。
スポーツの世界は、人種差別を受けることはたまにありますが、まさか自分が体験してしまうなんて思ってもいなかったです。
チームメイトに救われる
人種差別を受けたとき、最初は切り替えられたのですが、次第に差別がエスカレートし頻繁に起き始めました。
街中を歩いているだけで、嫌な目で自分を睨んできたり、車からペットボトルを投げつけられたりと度を超えた差別を受けました。
かといって、怒り返してしまっても相手も逆上してしまうので、自分の中で気持ちを落ち着かせていました。
そんな日々を繰り返し、心身ともに疲れ切った時に仲の良いチームメイトからご飯の誘いが。
誘いは嬉しかったのですが、レストランや外出すると周りの目線が気になって行きたいという気持ちにならなかったのが本音です。
それでも、チームメイトは家の前まで迎えに来て強引に連れて行かされました。

レストランに着き店内に入ると、近くの席に座っていたお客さんが嫌そうな顔をしたり、接客してくれた店員さんも距離をとってオーダーするなど明らかな対応をしてきました。
また、いつも通りの嫌がらせな対応をとられたのです。
すると、チームメイトが店員さんに向かって怒鳴りだしました。
きっとこのチームメイトは、自分が人種差別や生活で苦しんでいることを知っていたのでしょう。
店員に怒鳴った後自分にこう言いました。
「僕らは君の家族だから安心して」
その言葉のおかげで、肩の荷がドッとおりた感じがしました。
正直、もうすぐで心が病んでしまいそうなほど嫌な体験ばかりだったので、チームメイトには本当に助けられました。
人の冷たさも知りましたが、それ以上に仲間からの温かさの方が伝わった瞬間でした。
仲間意識の強さ
日本を出て、異国の地でサッカーだけをやりにきましたが、コロナウィルスの影響もありハプニングが続出しました。
中には、今回書いたような人種差別の被害に遭うなど、日本にいたらなかなかないようなことも体験したり。。。
しかし、そんな中で自分が一番強く思ったのが、「仲間意識の強さ」です。
チームメイトは、自分のことを友達のくくりを超えて家族のように接してくれました。
日本人はみんな親切ではありますが、海外の人と比べるとどこか他人事のような接し方をする感じがします。
なので、自分は友達や大切な人に対して、もっと優しく接さなければいけないと思わされた瞬間でもあります。
今回は、サッカーのことについては触れませんでしたが、海外での生活で実際に起きた出来事について書かせていただきました。